- 調剤薬局に勤めたいが大手か中小規模か迷っている
- 調剤薬局の規模による違いを知りたい
調剤薬局の大手と個人経営では何もかも大きく違います。
筆者は大手チェーンから小規模調剤薬局と様々な場所で働いてきました。
だからこそ、どちらの良い面も悪い面も知ることができました。
この記事を読むことで、大手チェーンと小規模調剤薬局の違いを知ることができます。
※小規模調剤薬局の定義は5店舗以下としております。
まとめ
【大手チェーンと小規模(個人・中小)比較表】
| 比較項目 | 大手チェーン薬局 | 小規模(個人・中小)薬局 |
|---|---|---|
| 給与 | 400~550万円が中心。昇給は制度的だが大幅アップは少ない | 都心部でも550~650万円の高年収あり |
| 勤務体制 | 休みが取りやすい/代務体制が整っている | 人数が少なく休みの穴埋めが大変なことも |
| 経営の安定性 | 会社規模が大きく安定しやすい | M&A対象になりやすく将来が不透明な場合も |
| 仕事内容 | 薬剤師が専門業務に集中しやすい | 専門外の業務(店舗管理、クレーム対応など)幅広く担当 |
| 研修制度 | 研修・メンター制度が充実。学びやすい | 研修なしのケースが多く自己研鑽が必要 |
| 人事評価制度 | 評価制度が整備されており昇格基準が明確 | 基準が曖昧な場合もある |
| キャリアパス | 管理薬剤師 → 店舗責任者 → ブロック長など明確 | 店舗規模により昇格のポストが少ない |
| 人間関係 | 異動があるため合わない場合はリセット可能 | メンバー固定で合わないとしんどいことも |
| メリット | 安定・研修充実・店舗移動の幅 | 高年収・裁量・自由度 |
| デメリット | 年収が伸びにくい/異動がある | M&Aのリスク/休みの調整難/業務範囲が広い |
はじめに:最近の調剤薬局の動向
はじめに、大手と小規模の店舗数の推移はどうなっているのでしょうか。
以下は店舗数別の同一法人薬局数の割合です。
※厚生労働省医療経済実態調査より引用一部改変

| 店舗数 | 2013年 | 2015年 | 2017年 | 2019年 | 2021年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 6店舗以上 (%) | 35.4 | 36.0 | 45.9 | 49.8 | 56.0 |
| 2〜5店舗 (%) | 51.8 | 54.8 | 45.5 | 35.5 | 28.0 |
| 1店舗 (%) | 5.0 | 2.0 | 2.9 | 9.1 | 10.4 |
| 個人 (%) | 8.5 | 7.2 | 5.6 | 5.7 | 4.4 |
| 調査数 (店舗) | 915 | 911 | 1089 | 1038 | 903 |
- 6店舗以上の法人割合は増加し、2〜5店舗の法人は顕著に減少。
- 1店舗経営の法人と個人は横ばい、もしくは微増です。
1店舗経営であれば正社員薬剤師を雇わない方針の薬局もあります。
つまり、働き先として中〜小規模は近年減少傾向にあります。
これをふまえて、大手と小規模を比較してきます。
1:給与
結論から言うと、
- 小規模=高年収になりやすい
- 大手=年収は安定(高くはない)
という構図です。
小規模薬局は “高い”
都市部でも年収600万以上は珍しくなく、700万クラスの提示を受けることもあります。
※筆者も4店舗の小規模薬局で「年収700万円」のオファーを受けたことがあります。
理由は単純で、
人手不足 → 高給でないと薬剤師が来ない
という市場原理です。
大手チェーンは450〜550万円が中心
年収は安定していますが、突出して高くはありません。
- 基本給は業界平均レベル
- 昇給も緩やか
- 転勤の有無で多少変わる程度
小規模の高額求人を探すには?
個人では限界があるため、転職サイトを併用するべきです。
小規模ほど“横のつながり”でしか出てこない求人があります。
ミチル過去に4店舗の小規模薬局で、700万円程度の提示をいただいたことがあります。
個人では小規模といえど高額案件を自力で探すことは難しいので、転職サイトを使うことをお勧めします!


2:勤務体制
大手が圧倒的に有利です。
小規模の場合、人員が足りなくて最低人数でまわしているところ少なくありません。
また急に休みがでた際のヘルプ体制、わからないことがあった場合の対応部署、店舗にトラブルがあった場合の対応、他にも小規模ではなんともならないことも大手なら対応可能です。
働いていて何かあった時、なんとか自分でしないといけないのが小規模、困っても助けてくれるところがしっかりとあるのが大手のイメージです。
労働組合も小規模はなく大手になるとあるところもありますね。
勤務体制は 大手の圧勝 です。
大手の特徴
- 休みが取りやすい
- ヘルプ体制が常にある
- トラブル対応部署がある
- 店舗人数にゆとりがある
- 労働組合がある企業も多い
困ったときは誰かが必ず助けてくれる仕組みがあります。
小規模の特徴
- 最低人数で運営
- 有給が取りづらい
- 店舗トラブル → 店長 or 薬剤師が“全部”対応
- 急な休みはほぼ不可能
「何があっても結局、現場がなんとかする」
これが小規模のリアルです。
安定・安心を求めるなら大手一択。
3:経営状況
一概には言えませんけど大手有利でしょう。
小規模は常にM &Aのリスクに怯えなくてはいけません。
小規模で高額給与をもらっていても、あと何年もらいつづけることができるのか不安は払拭できないと思います。
事実、調剤薬局のM &Aは相当数がおこなわれており、これからも進み続けるでしょう。



筆者も勤務先がM&Aされた経験があります。
いつも通りの朝に社長が来局していて、突然の報告。
給与は1年持ち越しで翌年に契約を結び直しで大幅減を提示されました。
経営の安定性は、規模が大きいほど強くなります。
大手のメリット
- 会社が潰れにくい
- 給与・賞与が安定
- 社会保険や福利厚生がしっかり
- 人件費削減で薬剤師が切られる可能性が低い
小規模はM&Aの嵐
ここ数年でM&Aは急増しています。
高年収をもらっていても、
「それが何年続くか?」は読めません。
4:仕事内容
大まかな仕事は薬剤師であれば規模数によらないでしょう。
大手であれば発注や薬の納品などの非薬剤師で務まる業務は積極的に薬剤師の手から離す傾向にあるので、より本来の薬剤師の仕事に集中しやすい傾向があるかもしれません。
一方、小規模は具体的に薬剤師の業務の範疇が明記してあるものはないことが多く、たまに薬剤師がやるできではないことまでも任せられることがあります。
別の言い方をすると、仕事の自由度が高いのが小規模調剤薬局です。



小規模薬局の管理をしていた際に、駐車場の契約までさせられたことがありましたね。笑
薬剤師の基本業務は同じですが、”業務の幅”が大きく異なります。
大手チェーンの特徴
- 発注・棚卸・在庫管理は事務スタッフが担当
- 薬剤師は投薬・鑑査・疑義照会などコア業務に集中
- 業務フローが統一されており働きやすい
小規模薬局の特徴
- すべての業務が薬剤師に回ってくる
- 時には薬剤師以外の仕事も任される
- 裁量が大きくやりがいはある
5:研修体制
大手の大きなメリットです。
新人薬剤師にはメンター(教育係)、中途採用には中途研修など経験に応じてしっかりとしたフォローアップ体制が整っていることが多いです。
良し悪しですがある程度経験者であると、与えられる研修より自分で学びたいと思うようになるので、大手の研修量がわずらわしくなることもあります。
一方、小規模は研修なんて皆無なことが多いです。
自分で学会や勉強会などに参加する必要があります。
研修制度は大手最大の強みです。
大手チェーンの研修
- 新人向けメンター制度
- 中途採用向け研修
- eラーニング
- 認定薬剤師の補助制度
- 店長研修・管理薬剤師研修 etc.
若手薬剤師ほど恩恵が大きいです。
小規模薬局
- 研修はほぼない
- スキルアップは自費で学会・勉強会へ
- 店舗により教育の質がバラバラ
経験者でも、大手の研修量に「多すぎる」と感じる場合もありますが、
薬剤師としての基礎を固めたいなら大手が有利です。
6:人事考課
大手はしっかりとしています。
直属の上司とマネージャーの2人より毎年人事考課を受けることが多いです。
例えば調剤ミスにより減点されたり、研修により加点されたりなどです。
薬剤師の仕事をなかなか点数をつけるのは難しいので賛否両論あると思います。
言うまでもなく小規模ではないことが多く、小規模で人事考課シートみたいなものは見たことがありません。
大手チェーン
- 管理職2名以上による評価
- 決まった評価基準が存在
- ミスは減点、研修参加は加点など明確
- 昇給が読みやすい
透明性が高いのが特徴。
小規模薬局
- 人事評価制度が存在しないことが多い
- 昇給は店長や社長の裁量
- どれだけ努力しても評価につながらないことも
キャリア志向の人には不向きです。
FAQ(薬剤師の就活・転職でよくある質問)


Q1. 新卒は大手と小規模どちらが良い?
A. 新卒は大手がおすすめです。
理由:
- 研修が整っている
- 薬剤師としての“基礎力”が身につく
- フォロー体制が強い
- メンター制度がある会社が多い
小規模は裁量が大きく魅力的ですが、最初からすべてを自力でこなす必要があるため負荷が大きめです。
Q2. 小規模薬局は本当に高年収なの?
A. 結論:高年収になりやすいです。
特に
- 地方
- 人手不足の地域
- 個人経営の複数店舗
などでは年収600万~650万が比較的多い傾向があります。
ただし
- 休みの取りづらさ
- 体制の弱さ
などをセットで理解しておくことが大事です。
Q3. 大手チェーンのデメリットは何ですか?
主に次の3つです。
- 異動がある(転居を伴う可能性も)
- 給与が大幅には上がりにくい
- 自由度が低い(マニュアルが多い)
ただし、働きやすさや将来の安定という点ではかなり魅力があります。
Q4. 小規模薬局のいちばんの魅力は?
裁量の大きさ × 年収の高さです。
- 医薬品の選定
- 発注の最適化
- 店舗運営
- 患者対応の判断
など、薬剤師としての判断領域が圧倒的に広いのが最大の特徴です。
Q5. M&Aされたらどうなりますか?
大手に買収された場合、多くの薬局では:
- 給与体系は大手基準に統一
- ノルマやマニュアルが導入
- 勤務時間や休暇制度は改善されることが多い
- 異動の可能性が生まれる
総合的には「悪くなる場合より良くなる場合」がやや多めです。
Q6. 年齢によっておすすめは変わりますか?
はい、変わります。
- 20代 → 大手(基礎固め)
- 30代 → 大手 or 小規模(ライフプラン次第)
- 40代以降 → 小規模が合うケースも多い
家族・子ども・住宅ローンなどの“生活”も一緒に考えるとブレにくいです。
Q7. 年収より大事なポイントはありますか?
実はあります。
それは “自分に合う働き方かどうか”。
- ワークライフバランス
- 労働組合の有無
- 店舗の忙しさ
- 人間関係
- 転勤制度
自分が何を優先したいかで、大手か小規模かの答えはほぼ決まります。
まとめ
- 大手有利:勤務体制、会社の経営状況、研修体制、人事考課など
- 小規模有利:給与、仕事の自由度
大手か?小規模調剤薬局か?
結局はどちらにもメリットデメリットがあり一概には決めることができません。
しかし、迷った時に筆者はライフステージに選択方法があると考えます。
20代:大手お勧め。まずは薬剤師として一人前になるために学ぶことが必要です。初めから高額を魅力に小規模へ就職はつぶしがきかず危険です。
30代:大手お勧め。定年までまだ先が長いです。M &Aのリスクを考慮すると大手となります。
40代〜:小規模もあり。そろそろ定年まで逃げきれそうな雰囲気もしてきます。最悪、小規模を何社か渡り歩く考えもありでしょう。
あくまで1つの考え方です。
結婚の有無や貯蓄の有無などでも大きく変わりそうです。
以上です。








